個人事業の消費税

個人事業主の消費税

消費税は、消費者や取引先から一旦預かっている税金です。

消費税は「2年前の課税売上高が1000万円を超えた事業者は、消費税の課税事業者である」という原則があります。

つまり、個人事業主は、開業から2年以上が経過し、売上が1000万円を超えると、利益の有無にかかわらず、消費税を支払わなければなりません。

消費税というのは、個人事業主や会社にかかわらず、商品の販売やサービスの購入に対して課される税金ですが、通常、消費者や取引先から商品代金を請求する際には、商品代金に加えて消費税を請求します。

消費税をもらうと、一見、自分のお金のように錯覚してしまいますが、消費税というのは、事業者のものではなく、消費者が国に支払うお金を、事業者として、一旦預かったという形になります。

そのため、本来であれば、消費税は事業者の売上や利益の有無にかかわらず、事業者は預かった消費税を国に納税する必要があります。

しかしながら、原則があれば、例外もあります。

消費税を納付しなくてよい事業主の2つの要件

消費税には「2年前の課税売上高が1000万円を超えた事業者は、消費税の課税事業者である」という決まりがあります。

言い換えると、以下に該当する場合には、消費税を納める必要はありません。

  1. 個人事業主として開業して2年以内の場合
  2. 個人事業の課税売上が1000万以下の場合

ただし、年間の売上(所得ではありません)が1,000万円を超えた場合は、消費税の課税事業者となり、消費税を納税する必要があります。

消費税の支払いは、売上が1,000万円を超えた年からではなく、その翌々年(2年後)となります。年間の売上が1,000万円を超えた場合は、赤字であっても、消費税の支払義務が発生しますので、ご注意ください。

売上が1,000万以下の場合の消費税の扱いについて

事業の売上が1,000万以下で消費税の免税事業者であっても、お客様や取引先に対して、消費税を請求することは、問題はありません。

ある程度の期間が経過しないと、その年の売上が1000万を超えるかどうかがそもそもわかりませんし、売上が1000万を超えた場合には、課税事業者となり、その年の消費税を支払う必要があるため、お客様や取引先に対して、消費税分を請求することは何ら問題ありません。

なお、余計なトラブルを避けるため、消費税の免税事業者であっても、課税事業者であっても、価格の話をする場合は、消費税込なのか別なのかを確認しておきましょう。



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消費税の計算方法 (年間の課税売上が1,000万超の課税事業者が対象)

消費税は、売上と共に受け取った消費税を全て納税するわけではなく、仕入れや経費などで支払った消費税を差し引いた金額を納税します。

消費税の納税額 = 売上によって預かった消費税 − 仕入や経費などで支払った消費税

年間の課税売上が1,000万を超えた場合、消費税を納税する必要がありますが、消費税を納税するためには、消費税を計算する必要があります。

消費税の計算方法には、一般課税と簡易課税の2種類があります。

  1. 一般課税
  2. 簡易課税

一般課税とは、売上によって預った消費税から、仕入や経費の支払によって支払った消費税を全て差し引いて、消費税額を求めるという基本的な計算方法です。

一方、簡易課税とは、売上によって預かった消費税は一般課税と同じように計算しますが、支払った消費税については、みなし仕入率で算出して、消費税額を求める計算方法です。

仕入や経費などで支払った消費税をいちいち計算しないで、預かった消費税に一定の「みなし仕入率」をかけて計算した額を「支払った消費税」とするため、簡易課税と呼ばれています。

一般的に、一般課税よりも簡易課税のほうが簡単な上、消費税の負担が減るケースが多いようです。

ただし、簡易課税を選択するには、年間の課税売上高が5,000万円以下でなければなりません。また、事前に(前年までに)税務署に対して「消費税簡易課税制度選択届出書(国税庁)」を提出する必要があります。

例えば、2010年の事業年度から簡易課税に移行したい場合は、前年の2009年12月31日までに、管轄の税務署に対して「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。

ただし、簡易課税には「一度簡易課税を選択すると、その後2年間は変更できない」というルールがあるので、中長期的に見て、どちらの計算の方が良いのか、しっかり検討してから選択しましょう。

簡易課税をやめる場合には、簡易課税をやめる前年の12月31日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書(国税庁)」を提出する必要があります。


簡易課税の計算方法 (年間の課税売上が5,000万以下の課税事業者が対象)

簡易課税を受けるには、下記が必要です。

  1. 年間の課税売上高が5,000万円以下
  2. 事前に税務署に対して「消費税簡易課税制度選択届出書(国税庁)」を提出
    (提出期限は、適用を受けようとする課税期間の開始日前日まで)

簡易課税の計算式は、下記になります。

消費税の納税額 = 売上にかかる消費税 −( 売上にかかる消費税 × みなし仕入れ率

みなし仕入率は、個人事業の種類ごとに次のように区分されます。

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 製造業、農業、林業、漁業、鉱業、建設業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業など 70%
第四種事業 その他の事業(飲食店業など、第1〜3種・第5〜6種に当てはまらない事業) 60%
第五種事業 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第六種事業 不動産業 40%

参考:国税庁(タックスアンサー)


簡易課税のシュミレーション

小売業で、売上が1500万だった場合の消費税を簡易課税で計算してみます。

消費税 = 売上にかかる消費税額 − ( 売上にかかる消費税額×みなし仕入れ率 )に当てはめると、

消費税=1500万×8% ー(1500万×8%×80%)=120万ー96万=24万

小売業で、売上が1500万だった場合、消費税を簡易課税で計算すると24万円となります。

売上が1500万だと、消費税はかなり高いように思えますが、消費税を算出する際には、仕入や経費に支払った消費税額を差し引いて計算するため、単純に売上に消費税率をかけた金額ではありません。

簡易課税で消費税額を計算すると、簡単ですし、実際の納税額も少なくなりますね。



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消費税の納付方法

個人事業主の場合は、所得税と同様に、事業期間(1/1〜12/31)の消費税額を計算し、翌年の3月末までに、消費税の確定申告と納税をします。

通常、所得税の確定申告と合わせて、消費税の確定申告もすることが一般的です。

消費税の納税期限は、消費税の申告期限と同じ(3/31まで)です。

消費税の納付は、所得税と同様に、主に以下の方法があります。

消費税納付の注意点

消費税というのは、国税と地方消費税に分かれます(国税庁)が、国税部分の消費税の納税額が48万円を超える場合には、消費税および地方消費税の中間申告と納付が必要となります。

中間申告と納税回数は、前年の消費税の納税額(国税部分)によって、年1回、3回、11回に分かれます。

消費税の中間申告と納税の詳細については、国税庁タックスアンサーでご確認ください。

さすがに、このレベルになると、自分一人で確定申告を行うことが難しくなるので、税理士に計算や税務手続きをお願いしたほうがよさそうです。

信頼できる税理士がいない個人事業主は、こちらで税理士を探してみましょう。何度でも無料で税理士を紹介してもらえます。


消費税まとめ

以上のように、消費税について見てきましたが、消費税について気になるということは、個人事業が一定の売上規模になってきたとも言えるわけです。

個人事業の売上が増えると、個人事業主としては非常に喜ばしいことではありますが、その反面として、所得税や住民税の負担が増え、個人事業税や消費税の負担も増えることになり、税金面で頭を悩ますことになります。

所得税住民税個人事業税は、経費を増やすことによって、納税額を抑えることができますが、消費税については、売上にかかる税金であるため、他の税金に比べて、対策の方法がほとんどないというのが実情です。

売上が拡大している個人事業主が消費税を免れる手段として唯一あるのが、個人事業を法人化することです。

消費税は「2年前の課税売上高が1000万円を超えた事業者は、消費税の課税事業者である」という原則がありますが、この事業者というのは、個人事業主だけではなく、株式会社などの法人も該当します。

そのため、個人事業を法人化すると、法人化した2年間は消費税の免税事業者となり、売上が1000万を超えていても、消費税を支払う必要はありません。

ただし、個人事業を法人化すると、消費税の面ではメリットがありますが、法人は従業員だけでなく事業主も社会保険の加入が義務づけられているため、健康保険や厚生年金などの負担が個人事業主の時よりもかなり増えるというデメリットがあります。

また、法人設立には設立費用が必要ですし、税理士に税務を依頼する場合にも、個人事業主の時よりも税理士費用が高くなることが一般的です。

そのため、法人化をするかどうかは、税金だけの観点だけではなく、社会保険料や今後の経営ビジョンを踏まえた上で判断されることをおすすめします。


確定申告の方法

確定申告のやり方とその流れについて、まとめました。


個人事業主の税金


廃業する場合



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