自営業の職種、年収、税金、年金について
自営業とは? 個人や会社と何が違うのか?
自営業とは、会社員として毎月給与をもらうのではなく、独立して自分で行っている事業のことです。自分で事業を行う場合には、株式会社などの会社を作る場合と、会社を作らずに個人で事業を行う場合がありますが、自営業は「会社を作らずに個人でやっている事業のこと」を言います。別名、個人事業とも言います。自営業をやっている人は自営業者、または個人事業主とも言います。
街を歩いていると、〇〇商店とか、たばこ屋さん、お酒屋さん、米屋さん、〇〇事務所、〇〇教室などの看板をよく見ますが、このような屋号(お店の名前)でやっているの多くのお店が自営業です。チェーン展開していないラーメン屋さんや美容院なども、ほとんどのお店が自営業と言えるでしょう。
また、自営業と言われると、お店ばかりに目が行きますが、フリーでwebデザイナーやプログラマーなどをしている人や、会社を作らずに農業や漁業などをしている人も自営業と言えます。フリーランスは自営業者の別名です。
こうして考えると、自営業者とは、会社員ではなくて、無職でもない人の総称ということができそうです。ちなみに、どれくらいの自営業者が日本にいるのかというと、2011年時点での国のデータだと、541万人の人が自営業者で、家族従業者と合わせると711万人が自営業を営んでいるようです。日本で働いている人が約6000万人くらいなので、日本で働いている人の約1〜2割の人が自営業をやっていることになります。
ただし、最近では自営業者の人数が減ってきているようです。自営業者の高齢化や、大規模なショッピングモールの進出、アマゾンや楽天などのネットショップの広がりによって、自営業を廃業する人が多くなっているようです。確かに、少し地方に行くと、商店街なのに、シャッターがずっと閉まったままのお店がたくさんあったりします。何とか地方再生のためにも、元気な商店街が復活してほしいものです。
自営業のメリット
そんな自営業ですが、まず自営業の主なメリットを見てみましょう。
自分のやりたいことが自由にできる
会社員であれば、仕事でやりたいことがあっても、上司などにお伺いを立てて承認を得られなければ、自分のやりたいことや希望する部署に異動することはできませんが、自分で行う自営業であれば、自分のやりたいことが、自分のタイミングで、自由にやることができます。予算や人員などもすべて自分で決めることができますし、会社への報告物や会議などに時間をとられることはなく、自分のやりたいことに集中することができます。
働く時間や場所も自由 (残業や通勤ラッシュから解放される)
自営業であれば、勤務地や労働時間を自分でコントロールすることができますので、子供がいて早く帰らなければならない場合は残業しないような仕事や働き方をすることができます。また、勤務地を自宅にしたり、勤務の始業時間や終業時間を通勤ラッシュ時とズラすことにより、大変な通勤ラッシュからも解放されます。休みも土日とズラすことによって、旅行なども安く行けたり、人混みや渋滞からも解放されます。
自分が頑張った分だけ稼げる
会社員は、仕事を一生懸命がんばり、成果を出したとしても、上司が評価をしてくれないと給与は上がりませんし、評価してもらっても、歩合給が多い会社でなければ、劇的に給与が上がるということはありませんが、自営業の場合は、自分が頑張れば、その分だけ稼ぐことができます。会社員の夢と言われる年収1000万も、努力と頑張り次第では十分に実現は可能です。
付き合いや嫌な仕事は断ることができる
会社員であれば、上司や先輩から指示された仕事や付き合いを断ることは、なかなか難しいものですが、自営業であれば、自分がやりたくないことは、自分の判断で断ることができます。余計な付き合いなどをしたくなければ、一切する必要はありませんので、付き合いに行く時間やお金を、自分の好きなことに回すことができます。また、忙し過ぎて困る場合も、自分の判断で仕事を断ることで、仕事の時間やプライベートの時間をコントロールすることができます。
節税できる
会社員であれば、経費をつけることはほとんどありませんが、自営業であれば、事業に使った費用であれば、それは経費となるため、納める税金を少なくすることができます。また、国民年金基金や小規模企業共済などに加入することにより、節税となり、さらに将来の年金を増やすことができます。
上記をまとめると、自営業のメリットは「仕事、人間関係、通勤などの無用なストレスから解放されて、自分のやりたいことを自由に自分のペースでやることができる。」という点が最大のメリットだと思います。無用なストレスから解放されるということは、健康にもつながります。
自営業のデメリット
これまで自営業のメリットについて見てきましたが、当然、自営業にもデメリットがあります。
リスクがある
会社員にも会社の倒産やリストラなどのリスクはありますが、毎月の収入ベースで考えると、自営業は給与が毎月あるわけではありませんので、自分の報酬は自分で稼がなければなりません。特に自営業をやっていくためには、立ち上げ当初の収入の見込みが立ちにくい時期に、いかに収入を確保するか、お得意先を確保できるかが鍵となります。そのためには、独立前に取引先の開拓や資金などの準備を念入りにしておくことが重要です。収入の目途が立てば、精神的にも楽になりますし、その後の事業の目途も立てやすくなります。また、好景気の時もあれば、不景気の時もあるので、特に売上が難しくなりやすい不景気の時に、いかに収入を確保できるかが、自営業を長く続けていくために大事なポイントとなります。また、病気になっても、有給休暇や失業保険などは出ないため、自分で保険に入るなどの対応が必要となります。
やることが多い
会社員だと年末調整などで保険や医療費などの金額を処理するだけでしたが、自営業となると、毎月の売上や経費などの経理処理や、取引先を開拓などの営業業務、製品やサービスなどの企画開発業務など、事業に関わる様々な業務を、自分でやらなければなりません。やってみると意外に面白いものですが、どうしても自分でやりたくない場合は、外注することになります。そうすると、その分の費用がかかりますので、出費は覚悟しなかればなりません。
自己管理が難しい
自営業は働く時間や場所なども全て自由に決めることができますが、その分、いろんな誘惑に負けてしまいやすいというのがデメリットです。例えば、自宅で仕事をしていると、ついテレビを見たり、ゲームをしたりと、昼寝をしたりと、仕事以外のいろんな誘惑があるので、自営業は自由な分、自分で自分をコントロールすることが重要です。ある意味、ダイエットと同じようなところがあって、頭ではどうした方が良いかということはわかっているのですが、実際にちゃんとやるのは難しいというのは、自営業も同じです。自己管理が上手でない人は自営業をできないわけではありません。そういう人は自宅以外で仕事をしたり、誰かと一緒に仕事をするようにすると、自制心が働いて、仕事に集中しやすくなります。
このように自営業のデメリットは、自分がしっかりすれば克服することができます。どこまで本気で自営業に向き合えるかが成功の鍵となるでしょう。
自営業の主な職種
続いて自営業の主な職種について見てみましょう。自営業は、個人で行っている事業全般なので、多くの職種がありますが、よくある職種としては以下のようなものがあります。自営業の仕事内容を見て、自分にもできそうな職種を考えてみましょう。
- ラーメン屋、カフェ、バーなどの飲食業
- 洋服店、雑貨店、酒屋、米屋、八百屋、肉屋などの小売業
- 洋服、小物などのネット通販
- 美容師
- ネイルサロンやエステ
- 料理、ピアノ、そろばん、KUMONなどの各種スクール
- 整骨院、接骨院、マッサージ
- 大工、左官、電気工事、水道工事、整備士などのガテン系
- 司会、講師、カウンセラー、コンサルタント
- 設計士、建築士
- webデザイナー、プログラマー
- イラストレーター、ライター
- アフィリエイター
- 家主
- 税理士、行政書士、司法書士などの士業
- 陶芸家、漆職人などの伝統工芸
- 農業、漁業、酪農業、林業などの農林水産業
- デイトレーダーなどの投資家
自営業の職種として最もポピュラーなのは、身近で特別な資格などがいらずに開業できるカフェやバーなどの飲食業や、洋服、雑貨などを販売する小売業です。これらの職種だと、特別な資格なども特に必要なく身近ですので、自分がこれまで生活する中で不便に感じた点や不満に感じた点などを解決するような事業を行うと、自営業として成功する可能性が高くなります。
他に、自営業の職種として多いのが、IT系のwebデザイナーやプログラマー、建築や機械の設計などのフリーランスです。手に職を持っていると、会社に縛られることなく、フリーでも働きやすいということですね。
自営業の税金と年収について
次に自営業の税金や年収について見てみましょう。
自営業者が支払う税金は、所得税、住民税、個人事業税、消費税の主に4つです。中でも全ての自営業にかかる税金で、かつ申告が必要となるのが「所得税」です。よくテレビなどで有名な芸能人やスポーツマンが「税金が高くて半分も持って行かれた・・・」と言っていますが、これは主に所得税のことを言っています。日本では所得に応じて税金が決まる累進課税の制度をとっているため、所得(利益)が多くなればなるほど、所得税が高くなります。
なお、自営業者(個人)の場合は所得税ですが、会社の場合は法人税となって、自営業者とは違う形になります。それでは自営業者のメインの税金となる「所得税」の税率について、もう少し詳しく見てみましょう。
所得に対する税率と納税額の目安 | |
---|---|
(課税)所得 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超〜330万円以下 | 10% |
330万円超〜695万円以下 | 20% |
695万円超〜900万円以下 | 23% |
900万円超〜1800万円以下 | 33% |
1800万円超〜4000万円以下 | 40% |
4000万円超 | 45% |
このように収入から経費や控除を引いた所得が1,800万円以上ある場合は、所得税の税率が40%以上となって、所得税以外の住民税が所得の10%にかかりますので、高額所得者は「収入の半分が税金に持って行かれた」となるわけです。
自営業の年収としては、一概には言えませんが、一般的に200万〜1,000万くらいの人が多いように感じます。
これは、自営業を本業としてやっている人もいれば、おこずかい稼ぎなどの副業として自営業をやっている人もいますし、儲かっている自営業もあれば、そうでない自営業もありますので、平均するとこんな感じです。
本業として自営業をやっている人の年収は、だいたい300万〜600万くらいの方が多いように思います。会社員の平均年収とそれほど大差はないでしょう。
年収が少な過ぎると、本業としてやっていくことは難しいですし、売上が1000万を超えると消費税の負担が発生したり、所得税も比例して高くなりますので、この範囲の年収でやっている自営業者が多いようです。
さらに年収を増やしたい自営業者は会社を設立して、株式会社などの会社としてやっていくのが一般的です。これを法人成りと言います。
なお、自営業の主な税金である所得税は売上にかかるのではなく、あくまで売上から経費や控除を引いた所得(利益・手取り)にかかりますので、自営業者はメリットである「経費」をしっかり計上して、税金を少なくすることが可能です。
会社員時代と同じ収入が見込めるのであれば、自営業の方が経費や控除が使えるため、手取りは間違いなく多くなるでしょう。
自営業の年金や保険について
続いて、自営業の年金や保険について見てみます。自営業の年金や保険について、わかりやすくするために、会社員と自営業の主な違いをまとめてみました。
社会保険 の種類 |
会社員 | 自営業 | ||
---|---|---|---|---|
加入できる 社会保険 |
保険料 | 加入できる 社会保険 |
保険料 | |
健康保険 | 健康保険 | 会社と本人が折半 | 国民健康保険 | 全額自己負担 |
公的年金 | 国民年金+厚生年金 | 会社と本人が折半 | 国民年金 | 全額自己負担 |
雇用保険 | 〇 | 会社と本人が折半 | 加入できない | − |
労災保険 | 〇 | 会社が全額負担 | 加入できない | − |
会社員と自営業の年金や保険の主な違いは、自営業は保険料が全額自己負担なのに対し、会社員は会社と折半となる点です。
特に、差を感じやすいのが年金です。会社員の場合、自営業者が加入している国民年金に加え、厚生年金にも加入しているため、会社員の年金は自営業より多くなります。その分、会社員の支払いは、会社と折半とはいえ自営業者よりも多くなっています。
そこで、国民年金の年金だけでは老後に不安を感じる自営業者は、国民年金に加え、国民年金基金や自営業者が加入できる小規模企業共済などに加入することができます。これらに加入しておくことで、老後の年金額を自分で用意しておくことが良いでしょう。また、国民年金基金や小規模企業共済は、老後の年金額のUPでなく、所得の控除にもなりますので節税にもなり、おすすめです。
ただし、国民年金基金や小規模企業共済などの便利なものも、誰かが教えてくれたり、会社のように勝手に手続きをしてくれるわけではなりませんので、自営業者が自分で調べて、手続きをしなければなりません。確定申告もそうですが、自営業者は自分から動いて、積極的に情報を取りに行くことが求められます。
保険の主な違いは、自営業者は失業した際に手当がもらえる雇用保険や、通勤時や勤務中に怪我や病気をした際に保険金がもらえる労災保険に加入できないということです。雇用保険や労災保険は労働者を守るための保険ですが、自営業者は労働者ではなく、労働者を雇う側の雇用主、経営者となるため、加入できないというわけです。
このように自営業者の年金や保険は、会社員と比べて不利に見えるところもありますが、その分、月々の年金や雇用保険などの支払いは会社員に比べて少なくなりますし、年金や保険で不安があれば、自分で加入することもできますので、自営業者のほうが自分のニーズに応じて決めることができ、自由度が高くて良いとも言えるでしょう。
自営業の最大のメリットは、自分のやりたいことが、自分のタイミングで、自由にすることができることです。ただし、自由の裏側には自己責任という厳しさがありますので、自由や自己責任をメリットと思えるかが、自営業と会社員の分かれ目となるでしょう。
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